6K6-GT シングル パワーアンプ製作 (2) 電力増幅段

2005.3.1


RCA 6K6-GT

上の写真が今回主役の 6K6-GT。小ぶりな GT 管で、6AR5 と同じ特性をもつ 5極管。 今回これを A1 級シングルでステレオアンプを組む。


1.規格を調査する

まずはピンアサインから。
BASING DIAGRAM
  1. No Connection 
  2. Heater 
  3. Plate 
  4. Grid No.2 
  5. Grid No.1 
  6. --- 
  7. Heater 
  8. Cathode and Grid No.3 

続いて最大規格。
 Eh [V]   6.3 
 Ih [A]   0.4 
 Cin [pF]   5.5 
 Cout [pF]   6.0 
 Cg-p [pF]   0.5 
 Ep [V]   315 
 Eg2 [V]   285 
 Pp [W]   8.5 
 Pg2 [W]   2.8 
 Eh-k(K- peak) [V]   200 
 Eh-k(K+ peak) [V]   200 
 Rg1(F) [Ω]   100K 
 Rg1(C) [Ω]   500K 

動作例を見てみよう。いずれも A1 級シングル動作のものである。
 Ep [V]   100   250   315 
 Eg2 [V]   100   250   250 
 Eg1 [V]   -7   -18   -21 
 Rp [Ω]   104K   90K   110K 
 Gm [μmho]   1,500   2,300   2,100 
 Ip [mA]   9   32   25.5 
 Ig2 [mA]   1.6   5.5   4.0 
 RL [Ω]   12K   7.6K   9K 
 Dist [percent]   11   11   15 
 Pout [W]   0.35   3.4   4.5 


2.動作条件を決める

手持ちの部品と相談し、動作例の「プレート電圧 250V」の例を元に以下のように決定した。
 Ep [V]   250 
 Eg2 [V]   250 
 Eg1 [V]   -18 
 Ip [mA]   32 
 Ig2 [mA]   5.5 
 RL [Ω]   7K 


3.ロードラインを引く

Ep=250V,Eg1=-18V の点を中心に、Ep-Ip曲線に 7KΩ のロードラインを引いてみる。
6K6-GT Ep-Ip 曲線
7KΩ のロードラインが赤い点 (プレート損失) を越していないので OK。
この動作基準点から最大で 36Vp-p コントロールグリッドを振れば、 プレート側で 30V 〜 435V (405Vp-p) の電圧変化が得られる計算となる。

よって利得は
405 / 36 = 11.25 (約 21dB)
と求まる。


4.回路決定

さて実際の回路はどうなるか。バイアスの与え方を考えなければならない。 今回は自作アンプ復帰第1作目ということで、なるべく簡単な回路構成としたい。 よって、バイアスはカソードに抵抗を入れて浮かせる自己バイアス (カソードバイアス) 方式とした。

電力増幅段の基本回路はこんな回路となる。
電力増幅段
なんとも簡単な構成だ。Hi-Fi アンプとするためにはもう少し部品が必要だが、 基本はたったのこれだけ。

先の動作例から、RL=7KΩ、自己バイアス方式、Ip=32mA、Ig2=5.5mA、OPT の直流抵抗=190Ωという条件に加え、 手持ちの部品でこの回路に供給できる電圧 (Eb) はおよそ 278V であることから、 各定数は以下のようになる。

 Ep [V]   278 - (32E-3 * 190) - 18 = 254   254 
 Rk [Ω]   18 / (32E-3 + 5.5E-3) = 480   470 
 Rg1 [Ω]   470K   470K 
 Rg2 [Ω]   (278 - 18 - 250) / 5.5E-3 = 1818   1.8K 
 Co [μF]   0.47   0.47 

自己バイアスとは、カソードに抵抗を入れ アースより電位を浮かせることにより、 コントロールグリッドより電圧を上げる方式。コントロールグリッドは Rg1 で接地されているため、 相対的にカソードより電位が下がって見える。この例ではカソードが 18V となり、Rg1 で接地されている コントロールグリッドが 0V となっている。
自己バイアスは万が一プレート電流が増えることがあっても、カソード抵抗のおかげで 電流が抑えられる反面、供給電圧をその分嵩上げしなければならないことが欠点。


今回はココまで。次回は電圧増幅段の設計へ。

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